廃虚

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~信じたものは救われる~『遊戯王ZEXAL』感想

遊戯王OCG20周年を迎えていたようですね。(ここぞとばかりにアピール)

 

折角なので自分も何かやろうと思った結果まだ当ブログでしっかり「遊戯王ZEXAL」については触れていないと思い、自分の意見を纏めてみる事にしました。

 

 https://www.tv-tokyo.co.jp/anime/yugioh-zexal/sp/

 

 当作品はシリーズ4作目として2011年4月から放送され、主人公の九十九遊馬と謎の生命体アストラルが【No.】というエクシーズモンスターを集めていく……という事で始まりました。シリーズの中でも最もオカルト色の強い作品であり、肉体と精神の2元論を意識していると思われるアストラル世界とバリアン世界、そしてオーバーレイユニットと呼ばれるエクシーズ素材と、無機物からモンスターの姿に変形していくNo.として現れているのかと思います。

 

そんな本作ですが、個人的には遊戯王シリーズの中で最も疑問符が付く作品です。これには主に2つの理由があります。

 

1. 「カードゲーム」定義の独走

 

ZEXALは初期から「初心者向け」という方向性が打ち出されており、当初はフィールド全体のカードを俯瞰して見せたり、ルールの解説をしたりするなど丁寧で、とても良い方向に動いていたと思います。しかし途中から

  • オリハルコン・チェーン》や《トライアングル・イヴォルヴ》などのエクシーズ召喚の素材を踏み倒すカードの濫用
  • キャラクターの使うテーマデッキが殆ど「モンスターを並べてエクシーズ召喚を行い、それを装備魔法で強化したり罠で守る」デザインがなされており、デュエル展開に個性が欠けていた
  • シャイニングドローという使用者が恣意的にドローするデッキのカードを変更する行為を主人公が乱発している

 

 これらが目立つようになっていき、最終的にはカードゲームではなく召喚獣プロレスへ刷り変わってしまいました。

3つ目のシャイニングドローに関しては

「特別な相手にしか使っていない」

「カードゲーム作品での御都合主義をシステムとして可視化したに過ぎない」という意見をよく目にします。これらに対して私は「特別な相手だからといってキースのようにデッキトップのカードを摩り替えるイカサマを認めるべきではない」と思っています。付け加えておくならば、私はデッキ外から直接カードを加えるアプローチとしてセイヴァードラゴンもAカードもストームアクセスも好んでおりません。

 

2 キャラクターの排外的思想

 

 この作品の主人公である九十九遊馬は自身を裏切ったベクター達に対しても救いの手を差し伸べた事が原因として多数の視聴者から「菩薩」「遊馬先生」と呼ばれています。

 しかし、本当に彼はそう呼ばれるに足りる人物なのか私は疑問に感じています。何故なら、先生が救おうとしたのは自分が身内だと感じている存在だけだからです。

 「諦めなければ誰とでもわかり会える」と口では言っていましたが、元々はアストラル世界から追放された被害者とも言えるドン・サウザンドに対しては最初から倒す気満々の姿勢を見せており(126話)、結局最後まで彼とわかり合おうとする努力は見せませんでした。

 私は学級会は現実から乖離したべき論に終始してしまうので好きではありません。そして、コミュニティの平和を保つ為に、その平和を壊す存在を排除する必要性は肯定しています。しかし正直この「身内だけ無事ならば他の人間からはあらゆる権利を奪おうが知ったことではない」という先生の態度は諸手を挙げて賛成できるものではありません。ある意味ドン・サウザンドは『平和』の為に犠牲になった殉教者です。同様の理由でアークファイブの主人公遊矢がダブルスタンダードであるとよく避難されますが、その時に同じような行動を見せた先生を菩薩と呼んで持ち上げられる理由が私には全く理解できません。

 こういう内向きな考え方は原作にも見られたとは思いますが、ZEXAL以降の遊戯王シリーズで極端化したように感じられます。余所者は殺せ。まるで彼らは劇場版遊戯王のプラナのようです。

 

 以上のように述べましたが、私は序盤のZEXALにはテンポこそ悪いものの丁寧に話を進めつつ、カードアニメをやろうという姿勢を感じていました。10話~12話のシャーク周辺のエピソードは私も好きです。最初に挙げたオカルト要素の濃さも相まって、元々持っていたポテンシャルを生かし切れなかった事が残念で仕方ありません。CXやオーバーハンドレッドナンバーズなどを出しておきながら、結局No.が50半分近くしか出ずに、KONAMIに尻拭いをさせた事には最早何も言うべき言葉が見付かりません。敢えて言うならばこれらのカードを正規No.として出しておけばもう少し数を埋める事が出来たのかな、とは思います。